ひとりマーケティングのためのデータ分析

用語の定義 | ひとりマーケティング

マーケティングとは」で示しましたように、このサイトでいうマーケティングは「価値が売れるしくみをみんなでつくること」を指しています。

もっともことばで言うのは簡単で、実際にみんなの力を束ね、しくみをつくり上げていくような仕事は非常にハードルが高いものでしょう。ですからマーケティング担当者には能力はもちろん、相応の権限と肩書を持った人が充てられることがふつうではないでしょうか。

というわけで、なんだか「ひとりマーケティング」の看板とずいぶん見当ちがいになってきたと思われるかもしれないところですので、少し強調しておきたいと思います。このサイトで扱っているのは、いわゆるマーケティング担当者のためのマーケティングではありません。

不況を理由として、時には強引なまでに「新規の顧客を掘り出せ!」だの「コストを削減せよ!」といった指示が飛び交い、はたらく人たちを巡る環境は厳しくなる一方の昨今だと思います。イケイケドンドンのときの会社には、寛容な精神が野心的な成果に上手につながるような良い空気がどことなく存在します。しかしことジリ貧の状態になると、どうしても会社によるコントロールの指向が強まり、野心的なとりくみも少なくなりがちに思います。

どんよりとしたイヤな空気の漂うこのときですが、もちろん会社のほうも成果を取りにいかないと考えているわけではないでしょう。会社の本音を代弁するならば、良いときよりコストをかけずに成果が欲しいだけ―――なのかもしれません。ですから既存のリソースでそれを達成したいと思いますし、なかでもヒューマンリソースに特有の潜在的な部分の多さ、つまり「今は見えないけど出せたらきっと凄い何か」に期待が集まってしまうのは、流れとしては理解できないこともありません。

はたらく側からしたら、そうしたちょっとやっかいな空気の中で今までと変わらぬしごとのスタイルをただ貫き通すのも、なかなかに勇気が要ります。そんなとき、スーパーマンであれば変幻自在・状況適応・君子豹変なとりくみもできるのでしょう。いや、筆者には分かりませんが。でも、そうした人たちは知ってか知らずでか分かりませんが、マーケティングのエッセンスのようなものを自分に手の届く仕事にうまく組み込んで、どこか他人(ひと)とは違うユニークな仕事のスタイルをつくっているな…なんてことを筆者には感じさせるのです。…勘弁してください。

では、そんなオーラに気後れせずに、自分も他人とは違うユニークな仕事のスタイルを意識して考えてみればいいじゃん…と思っても、それはとても難しいことのように思うのです。たとえば、次のようなことが早々に壁となって立ちふさがります。

  • 営業マンのように実際の商品・実際のお客さんと接触することが仕事の基本にあると、価値の線引きも必要に迫られて出来てくるところがあります。ですが間接部門である事務の仕事では、実際の商品、実際のお客さんとの距離は近くないのがふつうでしょう。ややもすると、価値づくりに参加するモチベーションは希薄となりがちで、価値イコール商品だとすんなり言えないところがあります。

  • そもそも事務しごとでは実際のお客さんを相手に価値を売るという行動が発生しません。それゆえ「マーケティングする相手が………いないのでは?」ということになってしまいます。マーケティングを意識し、自分では奮闘しているつもりでも、傍から見たらシャドーボクシングになっているようでは悲しすぎます。

では、どう考えたらマーケティングをひとりの仕事の視点に落とし込めるか。

考えを重ねるほどに、これには発想の転換が必要なように思えてなりません。このストーリーのなかで、主人公のひとり・綾子は、意識的ではありませんが、次のように考えることによってそれをクリアしようとしています。これらは綾子の行動に直接影響を与える発想の源泉として位置づけています。

会社のなかの人に売る(実際には、提供する)

規模にもよりますが、会社では自分以外にもたくさんの人たちがいっしょにはたらいていることでしょう。事務しごとでは、お客さんと直接接することよりこうした社内の人たちと仕事上の関わりから接することの方が多い、なんてケースも少なくはないと思います。そうした場合、難しく考えず社内の人をお客さんと見立てたほうがすんなりはまります。本当のお客さんへ直接価値を提供できなくても、自分がサポートする誰かが以前にも増してそれを果たしてくれたなら、自分にとってもハッピーだ。 …そう思えればいいのかもしれません。

サービスを売る(実際には、提供する)

遠くのお客さん(本当の意味でのお客さん)の価値は見えづらくても、「会社の中のお客さん」の求める価値ならば、はるかに見えやすいのではないでしょうか。直接部門のしごとが本当のお客さんに製品やサービスを提供することであるとするなら、事務しごとは言うなれば、会社の中のお客さんたちに必要なサポート、つまりサービスを売っているとも考えられます。そのように考えれば、他の誰かと横並びの画一的なものを提供するより、付加価値の高い差別化されたサービスを提供しようという発想にもつながり得ます。

関係性から貢献を測る

事務部門では「波風立てず正しくやってあたりまえ」様の空気を他部門以上に強く感じることがないでしょうか。ひとつに、営業部門とちがって数字(売上)という具体的なものをガンガン取りにいくといった分かりやすい成果の指標がありません。そこで、どちらかといえばこうした足し算による評価の指標より、どの程度ミスをしたかといった引き算による評価の指標が多くなってしまうところがあります。その意味では、委縮を招きやすい環境であるともいえ、試行の必要なアクションに挑もうにも大きな障害となってしまいます。

「デキる人は逆にそこで奮起するだろ」と言われれば否定しません。が、とりあえず問題を転嫁するようで何なんですが、こうした評価の指標の軸は足し算に依った方が好ましいと思うのです。

そこで注目したいのが関係性です。ここにいう関係性とは「同僚」「他の部の人」とかいったものではなく、仕事の上で何かをやりとりするルートそのもののことを指しています。もしこのルートをどれだけ機能・向上させられたか、これを可視化することができたなら、自分が間接的に会社に果たした貢献度として利用できるのではないか…と、思うわけです。

たとえば、ある営業マンへ自分がサポートを開始する前と後との売上データをつかって、サポート回数との相関を数字にしてみれば、自分のアクションにある程度の客観性を付与できるかもしれません。

成果がはっきりとつかめるということは、何より事務部門では得がたい、少々の失敗を笑ってごまかせる余裕とモチベーションの向上につながるという点で、歓迎できることだと思います。

以上、いささかまわりくどくなりましたが要するに

会社のなかの人を相手に,
サービスを売るお店をひらく

ような発想をかたちにできたら、語弊はありますが「身の丈でマーケティングができそうだ」と思うところです。タイトルの「ひとりマーケティング」は、このような意味を込めて筆者が勝手に呼ぶもので、このストーリーのコンセプトとしています。

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