2023/7/10

イントロダクション

このページはABC分析表の作成 with Excelの補足ページです。

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Excel 2010 でピボットテーブル機能が強化されたことにより,ABC分析表の作成もより効率的に進められるようになりました。そこでこちらのページでは「ABC分析表の作成 with Excel」で紹介した手順を,あたらしいピボットテーブル機能にフィットするよう見直していこうと思います。

以下,ExcelによるABC分析表の作り方です。ここでは一連の手続きを Excel 2010 で追っています。一部ボタンの配置や名称などが異なる箇所がありますが(この場合,可能であれば当該箇所に明記します),手続きそのものは,「永続ライセンス版」にいうところの Excel 2019, Excel 2016, あるいは Excel 2013,そして,「Office365版」の Excel (本頁更新時点のver.1905)とも基本的には同じです。

晴花

元データ

元のデータです。未集計(クロス集計していない)の状態で,取引のレコードを単純に並べた表です。

レコード数(データ行の数)は218件ですが,下では一部のみ表示しています。

元データ・ABC分析(エクセル2010ピボットバージョン)

上のデータをもとに,ここでは「社員コード」別の“登場回数”でABC分析表をつくります(以下“登場回数”のことを「ポイント」と呼びます)。

IDの別にポイントを集計する

では,データ領域の任意のセル(空白でないセル)をアクティブにしてから,リボンの挿入タブテーブルグループにあるピボットテーブルの挿入ボタンをクリックします。

ピボットテーブルの作成ダイアログが開きます。ここでは正しいデータ領域がテーブル/範囲のテキストボックスに指定されているかを確認し,問題がなければデフォルトの状態のままOKボタンをクリックします。

新しいシートが追加され,画面右端にピボットテーブルのレイアウト用のウインドウが表示されました(設定により異なる場合があります)。

ピボットテーブル・レイアウトウインドウ

ピボットテーブルのフィールドリスト(画面右の「日付」「社員コード」「サービスコード」と表示されている枠)から社員コードをドラッグし,下の行ラベル枠内でドロップします

このとき,行ラベル枠内には「社員コード」が表示されています。

DIFFERENT VERSIONS

2013-: [変更された表記] 行ラベル

シートの左の方を見ると 「行ラベル」という見出しと社員コードがズラーッと表示されているのがわかります。

さて,前の手続きと同様にして,再び社員コードをドラッグし,今度は下の枠内でドロップします。この操作を計3回,繰り返します

1つめのデータは登場回数のカウントに,2つめのデータは構成比の表示のために,3つめのデータは累積構成比の表示のために使用します。

この時点でシートの左の方を見ると,あらたに「合計/社員コード」という見出しとともに,一見でたらめに見える一連の数字の羅列が表示されています。これは「社員コード」をExcelが“数字”と判断したためです(人間から見れば社員コードは端から文字列以上の意味を持ちえませんが)。別の言い方をすれば,社員コードのポイント倍となっています。

金額をベースとしたABC分析ならばそれでよいのですが,今回は回数をベースとした分析です。したがってこのままでは不都合ですので,次の工程で回数をカウントするよう指示を加えます

ピボットテーブルレイアウト用のウインドウ・右下方の枠には,ここまでの操作で合計/社員コードが3つ入っていることと思います。このうち最も上のものをクリックします。

すると,下のようなショートカットメニューが表示されます。

ここから値フィールドの設定を選びます。

値フィールドの設定ダイアログが表示されます。

選択したフィールドのデータからデータの個数を選択し,OKボタンをクリックします


簡単に言えば,この作業によって「社員コードは量的データじゃなくて個人を識別するIDとして使って!」という指示をExcelに与えます。

値フィールドの設定
DIFFERENT VERSIONS

2013-: [変更された表記] データの個数個数

同じようにして,2番目3番目合計/社員コードについても値フィールドの設定からデータの個数に変更しておきます。

下のように,社員コードの別に個数がカウントされました。これはつまり,5月に綾子がRS部員に対して個別に付加したポイントの数を意味している,ということになります。

集計されたポイント

値の降順に並べ替える

さて,次のステップとして

シート上に作成した3つのデータ項目のうち,最も左の「データの個数/社員コード」列の,データが表示されている任意のセルをアクティブにしておきます(下の図ではセルB4を選択しています)。

次に,リボンのオプションタブ並べ替えとフィルターグループの降順ボタンをクリックします

DIFFERENT VERSIONS

2013-: データタブ並べ替えとフィルターグループの降順ボタン

データの個数/社員コード」のデータが降順に並べ替えられました。これによって,綾子がつけたポイントが大きな人からの序列を意味するものとなりました。

表の体裁をととのえる

ここから,残る2つのデータ項目を加工していきます。

具体的には「データの個数/社員コード2」列を構成比に,「データの個数/社員コード3」列を累積の構成比となるよう設定を変えていきます。

再び,ピボットテーブルレイアウト用のウインドウ,右下方の枠に視点を移し,上から2番目データの個数/社員コード2上でクリックします。

ここから値フィールドの設定をクリックします。

値フィールドの設定ダイアログが表示されます。計算の種類タブに切り替えた後,ドロップダウンリストから列集計に対する比率を指定します。

指定後,OKボタンをクリックします。

またまたピボットテーブルレイアウト用のウインドウ,右下方の枠です。今度は上から 3 番目データの個数/社員コード3上でクリックします。

ここから値フィールドの設定をクリックします。

値フィールドの設定ダイアログが表示されます。計算の種類タブに切り替えた後,ドロップダウンリストから比率の累計を指定します。

指定後,OKボタンをクリックします。

ABC分析表の基本的な体裁は以上で完成です。

たとえばテンポラリーな資料の準備を迫られた場合であれば,ここで作成した表をもとにして,他シートで細部の体裁を整えていった方が効率的かもしれません(コピー&ペースト)。


他方,そのような資料作成ではなく Excel 上での ABC分析のひな型としての活用すなわち,分析のツールとしての使い方のほうに重きを置いていく場合には,さらなる手数が必要かなとも思います。たとえば,下の図のような列見出し名などに理解しにくい要素が残ってしまいます。ここからはそういった諸点を解決していきたいと思います。

ABC分析表の基本的な体裁

では,それぞれの列見出しをより相応しいものに変更します。

ここでは,A列 の見出しが社員コード,B列 の見出しがポイントになります。その他,C列・D列はABC分析表の場合,順次定型的に構成比累積構成比といった類いの見出しを当てておけばよいかと思います。

見出しの変更

クラスの別を明示する

次にクラス表記(Aクラス, Bクラス, Cクラス)を入れる場合を考えてみたいと思います。

ぶっちゃけ読み手で任意のラインも判断できた方が便利だとは思うので、それは最初から描き込んでおく必要があるものなのかい?と強弁するのも度胸が要るので、責任の在りかを明確にする意味ではクラス表記を刻んでおく方が望ましいこともあるでしょう。

この場合,ピボット表でIf関数を使って判定をおこなうのも面倒な調整が必要ですし,労苦に見合った利が得られるかといえば疑問です。そこでここではもっと簡単に考えて,条件書式を使った記号による判定法をとりたいと思います。

ピボットテーブルのABC分析表でクラス表記をいかに表現するかが課題

では「累積構成比」列の任意のデータをアクティブにします(ここではセルD4)。

次に,リボンのホームタブスタイルグループの条件付き書式ボタンをクリックします。

下のように,プルダウンメニューをアイコンセットその他のルールとたどります。

条件付き書式のアイコンセット

新しい書式ルールダイアログが表示されます。下の図の順番および内容で各所を設定します。


なお,ここではクラス分けの基準を便宜的に

  • 【Aクラス】 累積構成比 ≦ 70%
  • 【Bクラス】 70% < 累積構成比 ≦ 90%
  • 【Cクラス】 90% < 累積構成比 ≦ 100%

としました

この例の場合,上記の条件では同一の構成比を跨いでクラス分けがなされます(次の27 の表を参照)。こうした時には,本来は境界設定が意味を成すよう上記の条件も調整すべきところです。


その他の基準を適用して分析表を作成する場合には,下の図の“4”の値を適宜変更すればOKです。なお,条件付き書式の設定では“5”部分の仕様上,上から Cクラス,Bクラス,Aクラスと見立てて設定することになります。

すべて設定出来たらOKボタンをクリックします。

新しい書式ルールダイアログ

以上,ピボットテーブルのみでABC分析表を作成することができました。

下の図のように,各クラスは記号によって判別が可能です。

ABC分析表の完成。ピボットテーブルによるABC分析表のクラス表記は条件付き書式のアイコンセットでおこなった。

Tips: 元データを入れ替える

ここからはTipsとして活用法・展開について若干の説明を加えたいと思います。


このように作成したピボットテーブル上のABC分析表のひな形は,データソースの変更が容易で繰り返し利用できることから,複数のABC分析表をアウトプットしたい場合や,データセットをとり替えながら分析をおこなっていく必要のある場合などには利があると思います。

[Tips]ピボットテーブルを利用する狙い
DIFFERENT VERSIONS

2013-: 分析タブ

ただし,セルアドレスで範囲の再指定を繰り返すのは地味に面倒な作業ですので,端からソースを変更することが念頭にある場合には,元表については“テーブル”化してしまった方がいろいろと便利かもしれません(当該表の任意のセルをアクティブにし,挿入タブテーブルグループのテーブルボタン。下を参照)。

[Tips]元表をテーブルに

この関連としてたとえば,各シートに1つのテーブルが存在し,それらが「テーブル1」「テーブル2」といった番号つきの名前で管理されているような環境があるとします。

ここでのデータソースの変更に関しては,ピボットテーブルのデータソースの変更ダイアログでテーブル番号(下の図の赤い囲み部分)を変えるだけで済みますので,範囲指定に比べ,幾分かは負担も減るかと思います。

Tips: ピボットグラフでパレート図をつくる

あと,ええとこのピボット表からパレート図を用意する場合のヒントです。

この場合「構成比」は不要ですので,下の図のように枠から構成比のみ枠外へドラッグして削除してから,リボンのオプションタブツールグループのピボットグラフボタンをクリックします

ピボットグラフボタンを押した後に必要な作業は,別頁「パレート図の作成 with Excel」を参照ください。

DIFFERENT VERSIONS

2013-: 分析タブツールグループのピボットグラフボタン

しかし,せっかく作ったひな型を崩すと後が面倒ーっ!なこともあると思います。

ズボラな私の力技で申し訳ないのですが

から「構成比」は削除せずにそのままピボットグラフを作成して,「構成比」棒を不可視にし,凡例からは「構成比」の項目だけを削除するといった方法でも不都合はないかなーって思います。はい。

(1)「構成比」棒の枠線と塗りつぶしの色を「なし」に (2)「構成比」の凡例だけを削除

Extension

ABC分析のおり,とりわけデータが「なかった」ことにも関心をむけるアプローチがあります(「ABCZ分析」。この場合,「なかった」クラスをZとする)。これをピボット表で完結させる場合,あわせて以下のような手続きが必要になります。

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Z区分

最後にいましばらくの補足を重ねます。

ここまで無視してきましたが,実はこの月ポイントが発生しなかった(=ゼロ)人が1名存在しています(ABC分析表に記載されない)。

“社員コード 1002”がその人ですが,ここでの元データは「ポイントが発生したら記録する」というルールのもとにあることから,“社員コード 1002”に関するレコードは当然ながら元データにも存在しません。

重点管理のみを目的としたABC分析においては「ない」といった点に関心をはらわなければならない理由もないのですが,こと記録が発生しなかったという点をあえて無視しないアプローチもあります(ABCZ分析: 一般には「売上金額」や「販売数量」が0(ゼロ)ものをZ区分とする方法)。

たとえばマーチャンダイジングの局面で,「ない」ことが情報としての価値をもちえる場合などに利用できるかと思いますが,この場合,対象マスタとのすり合わせをおこなって「なかった」ことを別途表面化させる手続きが必要になってきます。

このようなABCZ分析表を作成したいとき
これまでのような手続きの中で,Z区分を加えて作成するための容易なpathはやはり,ピボット表から離れて処理をおこなうことかと思います(具体的な方法はABC分析表の作成 with Excel頁を参照ください)。

また,ひな形としてのピボット表の体裁を維持したいなら,Excel 2013以降に限り,元データと対象マスタとの間にリレーションシップを設定してやることで対応は可能です。その場合は,次のような処理を上に見た手続きの中に組み込んでいくことになります。

以下,その要点を示します。

元データとは別に全対象者(or商品等)を網羅したシートを用意し

いずれもテーブル化します(ここでは,前者のテーブルに「ポイント記録」,後者のそれに「全RS部員」という名前を定義しています)。

づづいて,元データのテーブルを使って

ピボットテーブルを作成していきますが,このとき,このデータをデータ モデルに追加するにチェックをつけておく必要があります。

そのまま,元データと対象マスタとの間でリレーションシップを設定するため

DIFFERENT VERSIONS

2016-: 分析タブ計算方法グループのリレーションシップボタン

key(ここでは「社員コード」)で紐づけて,別テーブルを参照できるように指定します。

ピボットテーブルのフィールドリストすべてのフィールドが表示されるようにしたうえで,対象マスタの集計項目をに,元データのそれをに振り分けていきます。

つづいてピボットテーブルのオプションからダイアログを呼び出し,いくつかの項目に手続きを加えると…

表示タブ「データのないアイテムを行に表示する」にチェック レイアウトと書式タブ「空白セルに表示する値」に 0(ゼロ)を入力

下図赤の囲みのような,「0(ゼロ)」値の項目が表示されます。ABCZ分析表のひな形を完成させるには,これに構成比・累積構成比列を加え(下図上段はこの時点のもの),さらには降順で並べ替え,条件付き書式を設定(下図下段)するなど上に見たABC分析表で必要とされた手続きを適宜加えていくことになります。

条件付き書式「数式を使用」の適用順序と式→A区分:=AND(D4<0.7,C4<>0)  B区分:=AND(D4<0.9,C4<>0) C区分:=AND(D4<=1,C4<>0) Z区分:=C4=0