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マリメッコ図で読む「年代別ストレス原因」

クロス集計表の構造を、マリメッコ図でどう読むか。国民生活基礎調査で実演する。

2026/6/8

クロス集計表とマリメッコ図は、同じ構造を持っている

マリメッコ図(モザイクプロット)は、2つのカテゴリ変数の関係を面積で表すグラフです。 X軸方向の幅が一方の変数の周辺分布を、Y軸方向の高さが他方の変数の条件付き分布を表し、 セルの面積が同時分布の大きさに対応します。

この構造はクロス集計表と完全に対応しています。 クロス集計表の行が積み上げの各セグメントに、列が各帯に、セルの値が面積に—— そのまま変換できます。言い換えれば、マリメッコ図はクロス集計表を 「数値のグリッド」から「面積のグリッド」に変換したものです。

使用データ:令和4年 国民生活基礎調査 表113 「悩みやストレスのある者数(15歳以上),最も気になる悩みやストレスの原因・性・年齢(5歳階級)・仕事の有無別」 より、性=総数、仕事の有無=総数を使用。公表値の単位は千人です。出典:厚生労働省。

問いを立てる——年齢によってストレスの中身は変わるか

まず、元データをクロス集計表の形で確認します。 行がストレスの原因(8カテゴリ)、列が年齢階級(7区分)、 セルの値が「そのストレス原因を最も気になるとした推計人数(千人)」です。

データ加工

元表の年齢5歳階級を、15〜24歳、25〜34歳、35〜44歳、45〜54歳、55〜64歳、65〜74歳、75歳以上の7区分に再集計しました。 また、ストレス原因は判読性を優先して意味の近い項目を8分類に統合し、「わからない」「不詳」は除外しています。 表中の数値は公表値に合わせて千人単位で表示しています。

ストレスの原因 15〜24歳 25〜34歳 35〜44歳 45〜54歳 55〜64歳 65〜74歳 75歳以上 合計(千人)
人間関係 411 378 636 1,019 930 968 807 5,149
恋愛・家庭 97 554 674 255 108 137 171 1,996
生きがい・時間 211 283 335 330 279 369 365 2,172
収入・家計 191 666 980 1,450 1,198 1,072 597 6,154
病気・介護 98 214 463 1,165 1,908 2,639 4,137 10,624
学業・教育 1,043 88 382 476 77 11 5 2,082
仕事 599 1,535 2,060 2,661 1,730 640 180 9,405
生活環境・その他 182 190 340 543 615 819 674 3,363
合計(千人) 2,832 3,908 5,870 7,899 6,845 6,655 6,936 40,945

この表から「年齢によってストレスの原因の構成比が変わるか」を読み取ろうとすると、 56個の数値を脳内で比較する必要があります。 列ごとの合計が異なるため、生の推計人数を並べただけでは構成比のパターンが見えません。

綾子

AYAKO

数字の表ってちゃんと読もうとすると目が滑るんですよね。 「仕事」の行だけ追っても、年齢が上がるにつれて増えてるのか減ってるのか、 各年齢全体の中でどのくらいの割合なのかが、すぐにはわからなくて。

クロス集計表の行・列がそのまま軸になる

マリメッコ図への変換ルールはシンプルです。 クロス集計表の「列」がX軸方向の帯に、「行」がY軸方向の積み上げセグメントに対応します。 各列の幅は列合計(その年齢階級の回答者数)に比例し、 各セグメントの高さは列内の構成比に比例します。

X軸(帯の幅)

年齢階級ごとの推計人数の合計(千人)
15〜24歳:2,832 → 幅 6.9%
45〜54歳:7,899 → 幅 19.3%(最大)
幅が広いほど、その年齢層の推計人数が多い

Y軸(セグメントの高さ)

各年齢内でのストレス原因の構成比
例:45〜54歳の「仕事」→ 33.7%
例:75歳以上の「病気・介護」→ 59.6%
高さが高いほど、その原因を選んだ割合が大きい

この変換により、ここで示した8分類×7年齢階級のクロス集計表の56個の数値が、 面積と位置で把握できるグラフになります。 X軸の幅(周辺分布)、Y軸の高さ(条件付き分布)、セルの面積(同時分布)という 3つの情報が1枚のグラフに収まります。

晴花

HARUKA

ここで示した加工済みクロス集計表とマリメッコ図は、セルの値と面積が一対一に対応している。 正確な値の比較には表が向いている。 でも、全体の構造や偏りの位置をつかむには、面積のグリッドとして見る方が直感的。

グラフで読む——年齢×ストレス原因の構造

bdastyle.netのマリメッコ図ジェネレーターで出力したグラフが以下です。 X軸が年齢階級(幅=推計人数)、Y軸が各年齢内のストレス原因の構成比です。

年齢階級×ストレスの原因のマリメッコ図

出典:令和4年 国民生活基礎調査 表113(厚生労働省)をもとに作成。単位は千人

グラフから読み取れる事実

  1. 15〜24歳は「学業・教育」が36.8%を占め、 全年齢階級の中でこの原因の構成比が突出して高い。 次いで「仕事」が21.2%。
  2. 25〜34歳・35〜44歳では「仕事」が最大のセグメントとなり、 それぞれ39.3%・35.1%を占める。「収入・家計」も16〜17%台で続く。
  3. 45〜54歳では「仕事」33.7%が首位を維持しつつ、 「病気・介護」が14.7%まで上昇し始める。 この年齢階級はX軸幅が最大(7,899千人)であり、グラフ上で最も面積が大きい帯になる。
  4. 55〜64歳では「病気・介護」が27.9%に達し、 「仕事」25.3%を上回って首位に転じる。
  5. 65〜74歳では「病気・介護」が39.7%、 75歳以上では59.6%と、 高齢になるほどこのセグメントが帯の大半を占めるようになる。
  6. 「恋愛・家庭」は25〜44歳で相対的に高く(11〜14%台)、 それ以外の年齢では3%以下に留まる。
  7. 「生きがい・時間」は全年齢で4〜8%程度と、年齢による変化が比較的小さい。
面積で見ると何がわかるか

マリメッコ図で特に見たいのは、単なる構成比ではなく「幅×高さ」で決まる面積です。 たとえば45〜54歳の帯は全体で最も広く(7,899千人、全体の19.3%)、 その中で「仕事」が33.7%を占めます。 そのため、45〜54歳×仕事のセルは、グラフ全体の中でも最大級の塊になります。

100%積み上げ棒グラフでも各年齢内の構成比は見えます。 しかし、どの年齢階級が全体の中で大きな重みを持ち、 その中のどの原因が全体に大きく効いているかは見えにくくなります。 横幅まで変えるマリメッコ図は、この「全体への寄与」を面積として確認できる点に特徴があります。

この図で言えること・言えないこと

この図から言えるのは、年齢階級ごとに「最も気になる悩み・ストレスの原因」の構成が異なることまでです。 なぜその違いが生じているのか、各年代の心理状態がどうか、社会的背景が何かまでは、この図だけでは断定できません。

晴花

HARUKA

注目すべきは55〜64歳の帯での逆転。 「仕事」のセグメントが縮小する一方で「病気・介護」が拡大し、 構成比の逆転が起きていることがグラフ上で視覚的に確認できる。 クロス集計表の数値だけを追っていると見落としやすいパターンだね。

独立性の検定との接続——クロス集計表は検定の素材でもある

クロス集計表に対して行う統計検定が、カイ2乗検定による独立性の検定です。 「行変数(ストレスの原因)と列変数(年齢階級)は統計的に独立か」を検定します。 独立であるとは、年齢によってストレスの原因の構成比が変わらない、 ということを意味します。

参考までに、この公表集計表で検定統計量を計算すると、以下の通りになります。

参考:独立性の検定

以下は、公表集計表(単位:千人)を用いた参考計算です。 調査設計や標本誤差を厳密に反映した検定ではなく、クロス集計表の偏りを確認するための補助的な計算として扱います。

帰無仮説:ストレスの原因と年齢階級は独立である(構成比は年齢によって変わらない)

χ²統計量
17,933.0
自由度
42 (行数−1)×(列数−1)= 7 × 6
集計表の総数
40,945(単位:千人)
最小期待度数
138.1(公表集計表ベース)
Cramer's V
0.270

χ²統計量は極めて大きく、自由度42の上側0.1%点(約74.7)を大きく上回ります。 ただし、今回のように集計規模が非常に大きい表では、ごく小さな偏りでも統計的有意に達しやすくなります。 そのため、ここではp値そのものではなく、マリメッコ図で見える構造と、効果量としてのCramer's Vを併せて確認します。 Cramer's Vは0.270であり、年齢階級とストレス原因には一定の関連があると読めます。

独立性の検定の素材であるクロス集計表と、マリメッコ図の素材は同一です。 検定は「独立とは言いにくいか」を数値で確認する道具ですが、 マリメッコ図は「どの年齢でどの原因が、どの程度の割合で、 どのように変化しているか」を一覧できます。 大標本において「有意である」は自明に近い結論であることが多く、 そのような場合こそ可視化による構造の把握が意味を持ちます。

綾子

AYAKO

「有意かどうか」より「どう違うか」の方が知りたいですよね。 グラフを見れば「75歳以上は病気・介護が約6割」というのが一目でわかるのに、 検定の答えは「はい、有意です」だけで……。

まとめ——マリメッコ図とクロス集計表の相性

このページで示したことを整理します。

  • ここで示した8分類×7年齢階級のクロス集計表では、行・列・セルの値が、 マリメッコ図のセグメント・帯・面積と一対一で対応する。
  • マリメッコ図はX軸の幅(周辺分布)、Y軸の高さ(条件付き分布)、 面積(同時分布)の3つを1枚のグラフで表現できる。
  • 独立性の検定の素材とマリメッコ図の素材は同一のクロス集計表であり、 検定と可視化は相補的な関係にある。
  • 大標本や大きな公表集計表では「統計的有意」は自明に近い結論になりやすく、 そのような場合には構造を直接観察できる可視化と効果量の確認が重要になる。

手元にクロス集計表があるとき、マリメッコ図に変換してみることで、 数値を追うだけでは気づきにくいパターンが見えてくることがあります。