ひとりマーケティングのためのデータ分析

TOOLS / INPUT-OUTPUT ANALYSIS

経済の波及効果を係数から「見える化」する、
Excelでの産業連関分析の実践手順。

投入係数・逆行列係数から、影響力と感応度を読み解く。

2026/4/26

綾子

AYAKO

産業間のつながりを数字にする——産業連関表はその設計図。

産業連関表とは

産業連関表(I-O表、投入産出表とも)は、国・県など一定の地域で一定の期間に行われた財やサービスの取引額を表にまとめたものです。日本では原則として5年ごとに作成され、最終需要の変化に応じた生産・雇用への波及効果の計算から、価格上昇がもたらす他産業への影響度の計算、環境問題への応用まで幅広く利用されています。

産業連関表の構造と本ページの範囲

産業連関表の列方向は、特定の部門が生産にあたって投入した中間財(原材料)や付加価値の額(費用の構成)を、行方向は、生産した財・サービスが中間財または最終財として需要された額(販売の構成)を示しています。

産業連関表の構造:行方向に販売構成、列方向に費用構成

このページでは、公表された産業連関表の部門を任意に集約する「部門統合」(x部門→y部門、x>y)と、生産波及効果を計るための投入係数表・逆行列係数表の作成手順を追います。産業連関分析の中でもきわめて基本的な部分に限定した内容です。

01

元データ

e-Stat で公表されている平成23(2011)年の日本の産業連関表(取引基本表・生産者価格評価表・13部門分類)を使用します。シート名は「元表」とします。この元表から4部門の統合表を作成し、投入係数表と逆行列係数表を作成することが目標です。

元データ:産業連関表(13部門)
02

部門統合

13部門を以下の4部門に集約します(部門統合)。

  • 第1次産業(農林水産業 1部門)
  • 第2次産業(3部門を統合)
  • 商業・運輸(2部門を統合)
  • サービス他(7部門を統合)
部門統合の流れ:13部門→4部門
部門統合の流れ:13部門→4部門
統合の方針(色の別に区分)
統合の方針(色分けで対応関係を示す)

新しいシート「4部門統合表」を挿入し、表の枠組みを作成します。入力が面倒な場合は下のリンクから表組みをセル A1 にコピーしてください。

シート「4部門統合表」の表枠

シート「元表」に切り替え、3行目と B 列に行・列を挿入し、識別番号を割り振ります。内生部門(13部門)は 1〜4 を、最終需要部門は 11〜15 を、付加価値部門は 21〜23 を割り当てます。ここではまず内生部門に番号を割り当てます。

3行目・B列に行列を挿入
3行目・B列に行列を挿入
内生部門に識別番号1〜4を割り振ってから……
内生部門に識別番号1〜4を割り振り
識別番号を行列を入れ替えて列方向にもコピー
識別番号を行列を入れ替えて列方向にもコピー
内生部門の準備完了
内生部門の準備完了(グレー領域)

最終需要部門(消費:11、投資:12、調整項:13、輸出:14、輸入:15)と付加価値部門(雇用者所得:21、営業余剰:22、その他:23)にも識別番号を入力します。

最終需要部門に識別番号11〜15を割り振って……
最終需要部門に識別番号11〜15を割り振り
最終需要部門の準備完了
最終需要部門の準備完了
付加価値部門に識別番号21〜23を割り振って……
付加価値部門に識別番号21〜23を割り振り
全3部門の準備完了
全3エリアの準備完了

4部門統合表」シートに切り替え、セル B16 をアクティブにします。データ タブ → データツール統合 をクリックし、統合元範囲に「元表」の識別番号を含む全範囲(セル B3:AF24)を指定、上端行左端列 両方にチェックして OK

セルB16をアクティブ→データ→統合
セルB16をアクティブ→データ→統合
統合元範囲テキストボックスをアクティブにして元表に切り替え
統合元範囲テキストボックスをアクティブにして元表に切り替え
元表でセル範囲B3:AF24を選択
元表でセル範囲B3:AF24を選択
上端行・左端列にチェック→OK
上端行・左端列にチェック→OK

集計結果を行・列ともに識別番号順に並べ替えます。まず行方向(データ タブ → 並べ替え)、次に列方向(オプション列単位)で並べ替えます。

行方向の並べ替え:対象範囲を選択
行方向の並べ替え:対象範囲を選択
並べ替えダイアログを開く
並べ替えダイアログを開く
行方向の並べ替え設定
行方向の並べ替え設定
列方向の並べ替え:対象範囲を選択
列方向の並べ替え:対象範囲を選択
オプション→列単位に変更
オプション→列単位に変更
方向を「列単位」に設定
方向を「列単位」に設定
列方向の並べ替え設定
列方向の並べ替え設定

単位を揃えます(元表の単位は「100万円」、4部門統合表の単位は「100億円」)。任意のセルに 10000 を入力してコピーし、集計値の範囲を選択して 形式を選択して貼り付け除算 で値を 1/10000 に変換します。

任意セルに10000を入力してコピー
任意セルに10000を入力してコピー
集計値の範囲を選択
集計値の範囲を選択
形式を選択して貼り付け→除算
形式を選択して貼り付け→除算
除算の設定
除算の設定

集計値を表の正しい位置に移動し、セル C4 にペーストします。行計・列計をエリアごとにオートサムで求め、「総需要」「国内生産額」を計算します。

  • M列「総需要」= 中間需要の計 + 最終需要の計
  • O列「国内生産額」= 総需要 + 輸入(控除)
  • 13行「国内生産額」= 中間投入の計 + 付加価値の計
集計値を正しい(対応する)位置に移動
集計値を正しい位置に移動
移動後の範囲をコピー
移動後の範囲をコピー
行計・列計をエリアごとに計算
行計・列計をエリアごとに計算
総需要・国内生産額を計算
総需要・国内生産額を計算

4部門統合表」の完成です。

4部門統合産業連関表の完成
03

構成比を求めてみる

4部門統合表から産業構造をざっと確認します。「国内生産額」を1とした費用構成(帯グラフ)、「総需要」を1とした需要構成(帯グラフ)、最終需要の内訳×産業(マリメッコチャート)、中間需要×中間投入の散布図などが有効な可視化手段です。

総需要と国内生産額
総需要と国内生産額
国内生産額に占める中間投入・付加価値の内訳
国内生産額に占める中間投入・付加価値の内訳(帯グラフ)
総需要に占める中間需要・最終需要の内訳
総需要に占める中間需要・最終需要の内訳(帯グラフ)
産業別の最終需要の内訳
産業別の最終需要の内訳(マリメッコチャート)
中間需要×中間投入の散布図
中間需要×中間投入の散布図
04

投入係数表

投入係数は「ある1単位の商品を製造するのに必要な原材料の投入量」、付加価値率は「1単位の生産に必要な労働・資本の投入量」を意味します。新しいシート「投入係数表A」を用意します(下リンクからセル A1 にコピー可)。

シート「投入係数表A」の表枠

「第1次産業」の交点セル(C4)に下式を入力し、表の最右列→最下行の順にコピーします。

  • CELL C4='4部門統合表'!C4/'4部門統合表'!C$13
投入係数の計算式を入力してコピー 投入係数表の完成
05

逆行列係数表

ここでは輸入による波及分を除いた国内波及のみを考慮する [I-(I-M)A]-1 型のレオンチェフ逆行列を使用します。新しいシート「」(投入係数表から逆行列係数表をつなぐ中間シート)に6つの表組みを用意します(下のリンクからセル A1 にコピー可)。

シート「~」に6つの表枠を用意

STEP1:輸入係数を求めます。調整項の扱いは総務省の資料に準じ、下式で計算します

分母は〔国内需要-調整項〕

  • =ABS('4部門統合表'!N4)/('4部門統合表'!M4-'4部門統合表'!K4-'4部門統合表'!J4)
STEP1:輸入係数の計算

STEP2:単位行列 I — 同一産業の交点に1、それ以外は0。

  • CELL B9=IF(ROWS($A$9:$A9)=COLUMNS($B$8:B$8), 1, 0)
STEP2:単位行列I

STEP3:輸入係数行列 M — 単位行列に1が立っているときのみ輸入係数を転記。

  • CELL B16=IF(B9=1, $B2, 0)
STEP3:輸入係数行列M

STEP4:行列 I-M(自給率 = 1 − 輸入率)

  • CELL B23=B9-B16
STEP4:行列I-M(自給率)

STEP5:行列 (I-M)A — 行列の積なので MMULT 関数を使います。「第1次産業」〜「サービス他」の交点範囲を選択してから入力し、Ctrl+Shift+Enter で配列数式として確定します。

  • =MMULT(B23:E26, '投入係数表A'!C4:F7)
STEP5:行列(I-M)A(配列数式)

STEP6:行列 I-(I-M)A

  • CELL B37=B9-B30
STEP6:行列I-(I-M)A

新しいシート「逆行列係数表」を用意します(下のリンクからセル A1 にコピー可)。

「第1次産業」〜「サービス他」の交点範囲を選択し、MINVERSE 関数で STEP6 の逆行列を求めます(Ctrl+Shift+Enter で配列数式確定)。

  • =MINVERSE('~'!B37:E40)
シート「逆行列係数表」の表枠
シート「逆行列係数表」の表枠
MINVERSE関数で逆行列を計算
MINVERSE関数で逆行列を計算

行計・列計をオートサムで求め、「[I-(I-M)A]-1」表が完成します。この表をタテに見ると、ある部門に1単位の最終需要が生じたとき各部門に誘発される生産の大きさがわかります。

列計をオートサムで計算
列計をオートサムで計算
行計をオートサムで計算
行計をオートサムで計算
逆行列係数表の完成
逆行列係数表の完成
06

影響力係数・感応度係数

[I-(I-M)A]-1」表から影響力係数と感応度係数を求めます。

  • CELL B8(影響力係数)=B7/AVERAGE($B$7:$E$7)
  • CELL G3(感応度係数)=F3/AVERAGE($F$3:$F$6)
影響力係数・感応度係数の計算式

影響力係数は「その産業に最終需要が1単位生じたとき、自産業や他産業をまきこむ力の相対的な大きさ」を示します(与える側)。 感応度係数は「全産業に1単位の最終需要が生じたとき、その産業が自産業を含む全産業からどれだけ需要を引き受けるかの相対的な大きさ」を示します(受ける側)。 とはいえ、4部門程度の単純化された経済モデルでは係数値の読み取りは大まかなものとなります。

影響力係数・感応度係数の結果

晴花