ひとりマーケティングのためのデータ分析
SPILL

TOOLS / DATA VISUALIZATION

データに潜む「偏り」や集中度を視覚と数値で測る、
Excelでのローレンツ曲線とジニ係数の求め方。

累積相対値で曲線を描き、台形公式で面積を求め、集中度を数字にする。

2026/4/26

晴花

HARUKA

格差を数字にする。その数字がどこから来るのかを理解してから使いたい。

ローレンツ曲線とジニ係数とは

所得分配の不平等さを計るための指標です。行政組織や公益団体のレポートなどで「所得格差」を検証するためのツールとして用いられています。

ローレンツ曲線とジニ係数のしくみ

ローレンツ曲線は、横軸に累計の人数、縦軸に所得の累計からなるグラフにプロットされる(曲)線です。所得の小さな人から順番に積み上げるという決まりのもと、所得の累積値と人数の累積値との関連から(曲)線の特徴が定まっていきます。

ジニ係数は、ローレンツ曲線から計算される値です。すべての人の所得がまったく同じであれば、ローレンツ曲線は一定の傾きをもつ直線(均等所得線)と一致します。格差が大きいほどローレンツ曲線は右下方に大きく膨らみ、ジニ係数はその乖離度合いを面積で表した値です。

「格差が存在しない」状態ではジニ係数は0に、「格差が存在する」状態ではその程度が大きいほど1に近づきます(このページの方法では完全に1になることはありません)。

0 → 1
ジニ係数は0(完全平等)から1(完全不平等)の範囲をとる
台形公式
ローレンツ曲線下の面積を台形の集合として近似して計算する

ここでは「所得格差」でなく販売担当部員に見る売上のばらつき(「営業力差異」)を異なる時点間で比べる趣旨で使用します。メインストリームからは外れますので、結論は参考レベルを超えない範囲での利用を想定しています。

SPILL MODE

Excel 365 / 2021 以降で使える「自動展開(スピル)」式に切り替えます。数式のコピー操作が不要になります。

01

元データ〜表の作成

元データ

この年6月の販売担当部員の売上を集計したものです(単位:円)。

元データ・ローレンツ曲線とジニ係数

小さな値から順に並べる

「売上」データを昇順に並べ替えます。「売上」の任意のデータを選択し、リボンのデータタブ →並べ替えとフィルタグループにある昇順ボタンをクリックします。

データを選択
データを昇順に並べ替え
並べ替え
データ→昇順

表の基部をつくる

セルC1から右に累積人数累積相対人数累積売上累積相対売上累積均等売上累積相対均等売上の順に6個の見出しを作成します。

[セルC1]累積人数,[セルD1]累積相対人数,[セルE1]累積売上高,[セルF1]累積相対売上高,[セルG1]累積均等売上高,[セルH1]累積相対均等売上高

見出しとデータの間に新しい行を挿入し、「累積人数」から「累積相対均等売上」列のすべてに0(ゼロ)を入力します。ローレンツ曲線を原点から引くために必要な行です。

行の挿入後,[セルC2:H2]0

「人の数」を積み上げる

「累積相対人数」は、"人の数"に関して、当該行時点での累積値の全体に占める割合を示すものです。

累積人数・累積相対人数の列(ハイライト)

「累積人数」列にリストの24人分の値を連続データで作成します。

  • CELL C3=SEQUENCE(24, 1)
累積人数列に1〜24を入力

「累積相対人数」列に、

累積人数÷総人数

となる式を配置します。セルD3

  • CELL D3=C3/$C$26

と入力します。「総人数」にあたるセル(ここではC26)はコピーを考慮して絶対参照にします。この式を表の最下行までコピーし、パーセントスタイルを適用します。

[セルD3]=C3/$C$26。この式をセルD26までコピー
  • CELL D3=C3#/C26

と入力します。あわせてこの列にパーセントスタイルを適用しておきます。

[セルD3]=C3#/C26

「金額」を積み上げる

「累積相対売上」は、"売上"に関して、当該行時点での累積値の全体に占める割合を示すものです。

累積売上・累積相対売上の列(ハイライト)

「累積売上」列に、先頭行は「売上」の先頭データを参照する式を、次行以降は

直前の累積売上+当該行の売上

となる式を配置します。セルE3

  • CELL E3=B3

と、セルE4

  • CELL E4=E3+B4

と入力し、E4の計算式だけを表の最下行までコピーします

ある程度の練度があれば、CELL E3=SUM($B$3:B3) を最下行までコピーした方がスマートです。

[セルE3]=B3, [セルE4]=E3+B4。セルE4の式をセルE26までコピー

「累積相対売上」列に、

当該行の累積売上÷総売上

となる式を配置します。セルF3

  • CELL F3=E3/$E$26

と入力します。この式を表の最下行までコピーし、パーセントスタイルを適用しておきます。

[セルF3]=E3/$E$26。この式をセルF26までコピー
  • CELL F3=E3:E26/E26

と入力します。あわせてこの列にパーセントスタイルを適用しておきます。

[セルF3]=E3:E26/E26

差はないと仮定して再度「金額」を積み上げる

「均等所得線」「均等分配線」などと呼ばれる、一定の傾き(グラフが正方の場合は45°)をもつ直線をグラフに描画するための列です。ここでは「均等売上線」と呼びます。

累積均等売上・累積相対均等売上の列(ハイライト)

「累積均等売上」列に、総売上から平均売上を求め累積値として表示する式を配置します。

総売上÷総人数×当該行の累積人数

セルG3

  • CELL G3=$E$26/$C$26*C3

と入力し、この式を表の最下行までコピーします。

[セルG3]=$E$26/$C$26*C3。この式をセルG26までコピー
  • CELL G3=E26/C26*C3#
[セルG3]=E26/C26*C3#

「累積相対均等売上」列に、

当該行の累積均等売上÷総売上

となる式を配置します。セルH3

  • CELL H3=G3/$G$26

と入力します。この式を表の最下行までコピーし、パーセントスタイルを適用します。「累積相対均等売上」列の値は「累積相対人数」列と一致するはずです。

[セルH3]=G3/$G$26。この式をセルH26までコピー
  • CELL H3=G3#/G26

と入力します。パーセントスタイルを適用しておきます。「累積相対均等売上」列の値は「累積相対人数」列と一致するはずです。

[セルH3]=G3#/G26
02

「散布図」を使ってローレンツ曲線その他を図示する

グラフ化に必要なデータは「累積相対人数」列、「累積相対売上」列、および「累積相対均等売上」列の3つです。下のハイライトの領域を選択しておきます。

D・F・H列(累積相対人数・累積相対売上・累積相対均等売上)を選択

リボンの挿入タブ →グラフグループにある 散布図(X, Y)またはバブルチャートの挿入 ボタンをクリックし、プルダウンから散布図(直線とマーカー)を選択します。

挿入→散布図→散布図(直線とマーカー)

グラフが作成されました。横軸は「相対人数(人数の累積比)」、縦軸は「相対売上(売上の累積比)」です。青線がローレンツ曲線、オレンジの線が均等売上線です。

この時点でのグラフのイメージ

グラフを以下の点で調整します。

  • 縦・横軸とも最小値 → 0、最大値 → 1
  • プロットエリア → 枠線を作成、目盛線削除、できるだけ正方に
  • 両軸の表示形式 → パーセント(未適用の場合)
  • 系列「累積相対売上」を最前面に移動(系列の順序設定)
グラフの書式調整(軸・プロットエリア) グラフの書式調整後(完成形)
03

「図形の面積」について考える

グラフの中の2つの図形に注目します。

赤の弓形領域と青の三角形領域

ジニ係数は

赤の面積÷青の面積

で求めることができます。全体を1としたとき(タテ100%×ヨコ100%=1)、青の面積はその半分なので0.5とすぐわかりますが、赤の面積は直接計算できません。

ジニ係数=赤の面積÷青の面積

参考として、青の面積が0.5という点に着目すれば、ジニ係数は赤の面積の2倍と等しくなることがわかります(上の式の分子分母にそれぞれ2を掛けると導出できます)。ここでは先の式を使用します。

[参考]ジニ係数=2*赤の面積

赤の面積を直接計算するのはやや難しいため、図の手続きで計算します。

青の面積-黒の面積=赤の面積

青の三角形の面積は0.5と判明していますので、ローレンツ曲線下方の面積部分(ローレンツ曲線下方)の面積が計算できればOKです。なお、工程の序盤で「0」の行を挿入したのはこの面積計算をゼロから始めるためでもあります。

ローレンツ曲線下方の領域は、下の図のように多数の台形に分解して考えることができます。1つ1つの台形の面積を求め合算する方法で計算できます(cf. 積分)。

より忠実には、グラフにいう左端の「台形」は三角形です。

ローレンツ曲線より下の領域=小さな台形の集合

台形の面積を求める公式

  • (上底+下底)×高さ÷2

の各要素を、ここで扱う台形にあてはめます。

台形の面積の公式=(上底+下底)*高さ/2

台形の相対人数をあらわす横軸について、左下の角を\(P_n\)、右下の角を\(P_{n+1}\)とし、対応する相対売上をそれぞれ\(V_{P_n}\)、\(V_{P_{n+1}}\)とすると、公式の各要素との対応は次のようになります。

  • [上底] \(V_{P_n}\)
  • [下底] \(V_{P_{n+1}}\)
  • [高さ] \(P_{n+1}-P_{n}\)
台形の公式の各要素をVn・Vn+1・Pnにあてはめた図
04

ジニ係数を求める

表の右に台形の面積の見出しを用意し、見出しの直下のセルに0(ゼロ)を入力しておきます。

[セルI1]台形の面積, [セルI2]0

公式に当てはまるよう計算式を組み立てます。セルI3

  • CELL I3=(F2+F3)*(D3-D2)/2

と入力し、これを表の最下行までコピーします。

[セルI3]=(F2+F3)*(D3-D2)/2。この式をセルI26までコピー

個々の台形の面積を合計すると、ローレンツ曲線下方の面積部分(ローレンツ曲線下方)の面積が求まります。

ローレンツ曲線下方の面積=0.41429109

赤の面積は 0.5 − 0.41 = 0.09 と計算できました。

0.5-0.41=0.09

ジニ係数は「赤の面積÷青の面積」ですので、0.09 ÷ 0.5 = 0.18 と求められます。

0.09/0.5=0.18(これがジニ係数)

ローレンツ曲線の描画、およびジニ係数の計算、完了です。

ローレンツ曲線のグラフ・ジニ係数の計算 完成

晴花